サイロ・エフェクト 高度専門化社会の罠
経営コンサル的なのと心理学的な見方があるけれど、サイロの存在とその影響を分析議論するためのフレームワークとして人類学的なアプローチをしようとしてるのが本書らしい。そもそもサイロは文化現象でその文化的パターン=分類学を研究するという方向なのだそうだ。
組織が大きくなってできた分類の隙間に起こる問題を企業や金融システム、行政などの具体的なケースで説明している。ダメなケースではソニー、よいケースではシカゴ警察の話が印象的だった。
既存の分類システムに疑問を持つのに不可欠な想像力を持つには
1.現場に出てミクロレベルのパターンからマクロ的全体像をつかもうとする
2.オープンマインドで観察する
3.タブーや退屈だと思って語られない部分、沈黙に感心を持つ
4.ひとが語ることとそ行動のギャップに注目する
5.異なる社会、文化、システムと比較する
6.人間の正しい生き方はひとつではない、という立場をとる
「インサイダー兼アウトサイダー」の視点から自分たちが世界をどう分類しているかを見直すことは避けることのできないサイロの弊害にとらわれるのを避ける方法のひとつだという。
本筋じゃないけれど面白かったのはロビン・ダンバーのダンバー数とよばれる人間にとって最適な社会集団の規模が150人前後という数だ。facebookの友達の数はだいたいこのくらいだし、twitterのフォロー数も100超えないようにコントロールしてたけどこっちはもう少し増やしてもよいかも、と思った。
東京どこに住む? 住所格差と人生格差
『年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学』 - exlibris
これの東京バージョンというところで目新しいことはあまりなく、タイトルの人生格差は言い過ぎで教育格差くらいのような気がするけどそれも所得格差で説明されていると思う。
食物の入手効率化のために人口密度を高めて人類は繁栄したと引用されているけれど、人口減少の日本で東京の一部に集中するのは近接性の価値で説明されているのかよくわからなかった。
「ちゃぶ台返し」のススメ
ジャック・アタリがちゃぶ台返しなんていうわけないよなー、変な邦題でショッキングピンクの表紙で失敗したかな、と思っていたら、任天堂の開発者たちが使ってたらしく英語でupturn the tea table、フランス語でrenverser la tableという表現があるそうです。
第二章から四章(だったかな?)の偉人列伝は正直いってなんのためにあるのかよくわからないので最後の二章だけ読めば十分なんですが、
1.おかれた状況の制約を認識する
2.よい人生を送るために自分を大事に、ひとから大事にされるよう努力するべきと理解する
3.孤独を受け入れ他者に期待しない
4.誰もが固有の才能を持っていていることを理解し、一度きりの人生の途上でいくつもの人生を送ることができると理解する
5.4までできると自分を見出し人生を選べるようになる
とのこと。必要なのは理解や認識なんだ。努力するのがつかれたとき、そうしたほうがいいんだと理解できれば少し休んでまた努力するだろうし、やりなおしができるだろう。