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exlibris

Whatever you do, Whatever you say, Yeah I know it's alright

『灯台守の話』

すげーよ、ジャネット・ウィンターソン。明日あたしが死んだら棺桶にはこの本をいれてください。

Amazon:『灯台守の話』

わたしはかつて救いようのないロマンチストだった。わたしは今も救いようのないロマンチストだ。わたしはかつて愛こそがもっとも価値あるものだと信じていた。わたしは今も愛こそがもっとも価値あるものだと信じている。わたしは幸せになることなど期待していない。どういう形であれ自分がいつか愛をみつけるなどとは思っていないし、たとえ見つけたとしてもそれで幸せになるとは思っていない。わたしは愛が解答だとも解決だとも思わない。愛は、たとえて言うなら自然の脅威だー太陽のように強烈で、不可欠で、非情で、巨大で、途方もなく、温暖でありながら灼熱であり、生命をはぐくむいっぽうで大地を干上がらせる。そしてそれが燃えつきるとき、この地球も死ぬ。

わたしの人生はちっぽけな軌道を描いて、愛のまわりをくるくる回る。けっしてそれ以上は近づかない。天への回帰を夢見るなんて、神秘主義者のやることだ。出かけるときは日焼け止めを欠かさない。わたしの守りは完璧だ。

それでも今日、いたるところに陽の光があふれ、形あるものがすべて自分の影でしかないようなこんな日に、わたしは気づいてしまうー人生でいちばん大切なこと、わたしが思い出すもの、手の中で何度も転がしてみるものは、家でも銀行の口座でも賞でも出世でもない。わたしが思い出すのは愛、すべてのものへの愛だーこの土埃の道、この日の出、川べりで過ごした一日、カフェで出会った見知らぬ人、そして自分自身ですら。自分ほど愛することの難しいものはない、なぜなら愛と自分本位はべつのものだから。自分本位になるのはたやすい。ありのままの自分を愛するのは難しい。誰かにそうされて、わたしが驚いたとしても無理もない。

だが結局勝つのは愛だ。この焼けつくような、ヤギが逃げ出さないように両側に鉄条網を張った道の真ん中で、わたしはふいに、自分が何を探してここまでやってきたのかに気づく。そしてきっとそれをすぐにまた失うだろうということにも。

半分こわれ、半分まっさらで、最初からまたやり直す。

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なんのために生きているのか。

世界を見にきただけだ、といったのは河井寛次郎だった。

自分が14歳のときとおんなじまんまにピュアーであると感じるのはきもちがいい。

わたしの人生はちっぽけな軌道を描いて、愛のまわりをくるくる回る。けっしてそれ以上は近づかない。

永遠なんてないのだ。そして同時に終わりもないのだ。

半分こわれ、半分まっさらで、最初からまたやり直す。

starting overなのだ。