exlibris

Whatever you do, Whatever you say, Yeah I know it's alright

アメリカ文学のレッスン

講談社現代新書 柴田元幸

このところアメリカ現代モノばかり読んでいて、このあたりが10代後半からずっと好きで、久々に読んでも面白いものが多かった。

アメリカ現代小説は面白いけど、それがどう自分にとって活かされているのかはずっと不明で、ほんとうは知らなくてはならないことや、考えなくてはいけない問題からの現実逃避的な時間の消費でしかないのでは?と思っていたところ、この本を読んでちょっとだけ救われた。

「小説のなかの人物たちが<他者>を消費することについて考えようとするなら、少なくとも、なぜ自分がこれを面白いと思いあれをつまらなく思うのか、それもあわせて考えてみるべきだろう。」

そこで出てくるのがリチャード・パワーズの引用で、わたしは彼の小説を読んだことがないのだけど、その小説の中では、他者と自分、モノと自分というような対象と自分の関係について、「写真を見る人と見られる写真」を用いて論理的に描かれているようだ。別の小説の中では「翻訳」と言っていることを柴田氏は自分のファイルを更新していく、と表現している。

たしかに読後は「面白かった、つまらなかった」ということだけかもしれないけれど、15年ほどアメリカの現代文学を読んできて、わたしのファイルはやはり更新されてきている、と考えることもできそうだ。