exlibris

Whatever you do, Whatever you say, Yeah I know it's alright

時の贈りもの

筑摩書房 リンダ・グレース・ホイヤー 重兼芳子・裕子 (訳)

この連作短篇集は、会社のそばの画廊の前庭で古本として売られていた。

画廊の横では白い種類のサクラの花が散っていて、庭の芝生はやわらかい緑色で、本の表紙には一重のバラとマメ科の花とスズランが書かれていて、とても春らしい組み合わせだった。

まず、母のことを考えて、年老いて、連れ添ったひとや友達も亡くなっていって、時間がたくさんあるというのがどういうことなのか、知りたかった。

主人公エイダと母を比べると、あまりにもかけ離れている。美しい田舎で、時に周囲の人の気遣いを迷惑とも感じながら暮らすエイダと、ゴミゴミした都会で、近所づきあいもほとんどなく働く母。

夫に先立たれたエイダはわりとあっけらかんとしているのに対して、父が倒れたときの母の慌て悲しむ様子など、あとがきで訳者が相似点としてあげているような個人主義というところで、わたしの母とは異なっている。

次には自分に重ねてみたけど、わたしが70、80歳になるころには、世の中はどうなっていて、どうやって死を迎える準備をするのか、想像は難しい。

著者のリンダ・グレース・ホイヤーはジョン・アップダイクのお母さんで89年に亡くなっている。文中にもイラストレーターとして活躍する息子が出てくる。

残念ながら娘はたいした活躍もできてないけれど、この本を母の日に贈ることにした。何か伝わるだろうとは思う。